30代主婦です。数年前に勤めていた職場で、先輩の結婚式に参列したときのことです。先輩はとても気の強い女性で、筋の通ったことを言っているとはいえ、そのきつい物言いで反感を買ってしまうことも多い人でした。私は幸い歳も近く、馬があったのか可愛がってもらっていました。プライベートで遊ぶこともあるほどの仲になっていたので、結婚の報告を聞いたときはとても嬉しく、結婚式も楽しみにしていました。結婚式には職場の皆で招待され、待ち合わせをして参列となりました。ぞろぞろと式場に向かう道中、上司などは「生意気なあいつもとうとう結婚かあ」「旦那さん尻に敷かれてんだろうなあ」「結婚したらもっとお淑やかにしないとダメだよな」などと軽口を叩いていて、これからおめでたい席だっていうのにこの人たちは…なんて辟易したりもありましたが、とにかく私は先輩の花嫁姿が楽しみでした。受付を済ませ、しばしの待機後チャペルへ。新郎の入場後、改めて扉が開き、新婦の入場。その時私は驚きました。バージンロードで先輩の手を引いていたのは、お母様だったんです。チャペル内をこっそり見渡しても、お父様らしき男性が見当たらない。もしかしてご両親は離婚されているのかな…?と思いましたが、真相はその後の披露宴でわかったんです。恙無く進行した披露宴の終わり、新婦からの手紙のコーナーで。新婦である先輩から、さきほど一緒にバージンロードを歩いたお母様へ宛てたて手紙。その中で、幼い頃お父様を亡くしていること、そのあと女手ひとつで育ててくれたお母様への感謝が淡々と、けれど涙とともに語られました。私は、先輩ととても仲良くしてもらっていると思っていましたが、お父様を亡くしているとは知らなかったので、びっくりしました。そしてその時、彼女の、他人にもそして自分にも厳しく、しっかり筋の通ったその強さの、理由がわかったような気がしました。同じテーブルの上司たちを見ると、必死に涙をこらえて、目頭を押さえていました。彼等はもちろん彼女の家庭の事情は知っていて、そういった中頑張っている彼女のことを誰よりもわかっていたから、だからこそこうやって泣かされるのが嫌でいつも通りの軽口で明るく振舞っていたようでした。思わず笑ってしまいましたが、私も涙が出てしまいました。とても、愛情にあふれた、素敵な結婚式でした。
34歳女 先輩の結婚式でホロリ
